最近、少し長いお話も聞けるようになってきた娘。
先日、ついに「これ読んで」と『こぐまのくまくん』を持ってきてくれました。
『こぐまのくまくん』は福音館書店の「はじめてよむどうわシリーズ」1作目です。
これまで読んできた絵本よりも、挿絵がシンプルで文字情報量が多い。
でも、私はずっとずっと待っていたんですよ~!
娘がこの絵本をリクエストとして来る日を!
だって、『こぐまのくまくん』は、私自身が子どもだった時に読んだ絵本のベスト3に入るから!
決して目立つ表紙ではないし、タイトルだって平凡すぎて、本屋さんでもなかなか手に取ってもらえない地味~な絵本らしいです。
でも、一度読んだら必ずその良さが分かる、愛さずにはいられない絵本です。
娘もその日から続けて何日も『こぐまのくまくん』を読んでと持ってきます。
『こぐまのくまくん』の特徴
絵本から児童書のちょうど真ん中くらいに位置する『ごくまのくまくん』には、次のような特徴があります。
- 1冊に4つのお話が入っている
- 1話11ページから14ページの長さ
- 字だけのページがある
- 目次がある
平仮名だけで書かれた文章は簡潔で、平仮名が読めるようになった子どもが自分で読むこともできます。
また、読み聞かせる場合でも、1話が短いので、時間がない時には1話だけ読むというように調整しやすいのでおすすめです。
自分で読む場合も親に読んでもらう場合でも、この絵本は子どもにとっては特別感があるのではないかなと思います。
普段読んでもらう絵本より小さくて、しっかりした装丁で、1話、2話なんて分かれていて、しかも目次が付いているこの絵本。
自分がちょっとお兄さんお姉さんになったようで誇らしく感じるのではないでしょうか。
『こぐまのくまくん』のあらすじと感想
第1話「くまくんと けがわのマント」
【あらすじ】ある寒い日、着るものがほしいというくまくんに、かあさんぐまが「ぼうし」「オーバー」「ズボン」をこしらえてあげます。それでもまだ「なにかきるものがほしい」というくまくん。おかあさんはどうしたでしょう?
ちょっととぼけた感じの、でも子どもらしいくまくんの要求。お母さんぐまの対応は、おおらかで落ち着いていてユーモアがあります。お手本にしたい素敵なお母さんです。
第2話「くまくんの お疲れ様です。たんじょうび」
【あらすじ】お誕生日の朝、おかあさんが見当たらないので自分でバースデースープをこしらえることにしたくまくん。誕生日のお祝いに来てくれたお友だちのめんどり、ねこ、あひるをおもてなししていると、うれしいサプライズが!
お友だちとの、ちょっとかしこまった大人びたやり取りは、子どもが好きなごっこ遊びそのものです。かあさんぐまが大きなバースデーケーキを持って現れた時のくまくんの喜びよう。バースデーケーキもさることながら、かあさんぐまの登場がうれしかったんだろうな。朝からかあさんぐまの姿が見えないことに、やっぱりちょっぴり不安を感じていたくまくんなんだろうな。
第3話「くまくんの つきりょこう」
【あらすじ】へんてこりんな宇宙帽をかぶったくまくんが「ぼく、これから月へいくんだ」と宣言します。鳥のように飛んで行くのだそうです。小さい丘の小さい木から飛び降りて月に着地したくまくん。さあ、どんなことが起こるかな。
鳥のように飛んで月へ行くという発想は、大人にとっては非常に馬鹿げたことのように聞こえます。でも、子どもにとっては本当に行けるかどうかはそれほど重要ではないんですよね。「月に行ったつもり、月にいるつもり」の空想遊びが楽しくて楽しくて仕方ないんですよね。私も経験あるからわかります。
第4話「くまくんの ねがいごと」
なかなか眠れないくまくん。かあさんぐまにたくさんの願い事について話しますが、最後に一番のお願いごとを話すとかあさんぐまがそれをかなえてくれます。その代わりに、くまくんもかあさんぐまの願いをかなえてあげます。
子どもって自分の話をしてもらうの、とても喜びますよね。我が家の娘も「お腹の中にいた時の話」「0歳の時の話」「1歳の時の話」なんて自分でタイトル付けながら、夜寝る前にその当時の話を聞きたがります。そうやって幸せな気分になることで、安心して眠りにつけるのでしょうか。
温かくユーモアたっぷりに描かれる日常のひとコマ
一見、とても平凡で退屈そうな絵本ですが、読み始めると「物語」「セリフ」「絵」のすべてにユーモアが感じられる1冊です。
たとえば、「くまくんの つきりょこう」の挿絵を見てみてください。
へんてこな宇宙帽をかぶったくまくんが、かあさんぐまに「ぼく、これから月へいくんだ」という場面。くまくんの立ち姿がすでになんだかおもしろい。
「どうやって?」と方法を聞くかあさんぐま。やれやれ何を言い出すの?という感じです。この絵を見ると、自分と娘の日常を思い出して、ついつい笑みがこぼれます。
この絵では、かあさんぐまが、くまくんの話を聞こうと、体をミシン台からくまくんにのほうに向けています。
作業の途中でも、どんなにへんてこりんなことを言われても、子どもに向き合うかあさんぐまの姿勢がお手本になります。
この絵の、ドレスにエプロンという格好や昔ながらの足踏みミシンは、若いママには古臭く感じるという方もいるかもしれません。でも、私はこのレトロな感じがとても気に入っています。
ちなみに、絵は『かいじゅうたちのいるところ』のモーリス・センダックが描いています。
シンプルで繊細で静かなセンダックの絵。
こぐまのくまくんの表情がどれほど生き生きと描かれているかを見るのも楽しいです。
娘は「くまくんの つきりょこう」のこのかあさんぐまのセリフがとても大好き。
「だけど、もしかしたら、おまえは、ころころふとったくまの子で、つばさも、はねもなくて、とびあがっても、すぐに、どすんとおちてくるかもしれないわよ」
一見、子どもらしいくまくんの空想を否定しているようですね。
でも、この言い方には、何となくユーモアと温もりが感じられます。
それに、この場面ではかあさんぐまは体を完全にくまくんに向けています。
こんなところからも、かあさんぐまはくまくんの子どもらしい発想をからかっているのでもなく、頭ごなしに否定しているのでもないことが感じられます。
ところで、この場面のセリフに我が家の娘は大うけです。
松岡享子氏が訳した、このとても古めかしい言い方が新鮮なんでしょうか。
このセリフは「もう一回読んで」と言われて、10回以上もリピートし、娘も完全に覚えてしまいました。
『こぐまのくまくん』は全5冊のシリーズもの
『こぐまのくまくん』は全5冊のシリーズものです。シリーズの他の絵本も同じようにユーモアがあるすてきなお話ばかりです。
我が家でも、今後、少しずつ買い足して読んであげたいと思います。